.私たちを取り巻く情勢

世界と日本の動き

1.米英軍を中心とするイラクへの武力攻撃を支持し、自衛隊の海外派兵を強行した小泉内閣は、治安権限がイラク政府に委譲されることを理由に自衛隊の撤退を決めましたが、治安の安定に向けて引き続き米軍を中心とする他国軍は駐留を続けます。さらに「世界の警察」を自負する米国は、核開発を進めるイランに対して武力行使も辞さない強硬な姿勢を見せており危険な状況が続いています。国益を第一に世界規模の米軍再編が進むなか、在日米軍の再編には、福祉を大幅に削ってでも巨額の税金を投入するなど、「米国一辺倒」の追従姿勢をいっそう強めています。

2.戦後日本は、第2次世界大戦の深い反省のうえに立ち、平和外交を基本に、政治・経済・文化のあらゆる分野でアジアの中心的な役割を果たしてきました。ところが、小泉首相のたび重なる靖国神社への参拝、平和憲法の改悪と憲法を無視するイラクへの自衛隊派遣。さらに、国家への忠誠を強制する教育基本法の国会上程など、近隣諸国の警戒心を煽っています。こうした自公連立政権の姿勢は、侵略戦争と植民地支配で苦しめられたアジア諸国民の心を傷つけ、日本がアジアで共生していくことを極めて難しくしています。アジア全体の平和と繁栄を築くための日本の責任は何か、という視点がいまこそ必要であり、負の遺産と緊張関係を後世まで引きずることは許されません。

3.非武装の平和主義を掲げた日本国憲法は、世界の人々から高く評価されています。しかし憲法を改悪し、米国と一体となり世界中で集団的自衛権(軍事力)の行使を可能にしようとする動きが強まっています。自民党は、「新憲法草案」を公表し、「戦争の放棄」から「安全保障」に修正して、武力行使を前提とする「平和の維持」に発想を逆転しています。自民・公明両党は、衆議院で憲法改正に必要な2/3議席を確保しており、野党や国民世論の動向などを見定めながら07年春の統一地方選挙、夏の参議院選挙の結果によって、改憲問題が具体的な政治日程にあがることが懸念されます。

4.日本経済は、原油高という不安要因を抱えながらも堅調に推移していると言われていますが、中小零細企業や勤労国民にその実感はありません。今回の景気回復は、大企業を中心に首切りを伴う不採算部門の切り捨てや分社化などの再編合理化を強行した結果です。あわせて景気回復局面に入ってからも人件費の抑制・削減が続き「過去最高益」を更新する要因となりました。これに対し圧倒的多数の中小企業や小売業は依然として業績不振に苦しんでおり、下請け単価の切り下げ、銀行の貸し剥がしなどによる倒産・廃業は後を絶ちません。そして、大企業と中小企業の格差、都市と地方の格差など二極化が進んでいます。個人商店の廃業、古くからの商店街の衰退など地域社会の空洞化もいっそう進みました。こうした格差の拡大こそ小泉構造改革による「景気回復」の現実の姿だといえます。

5.小泉内閣の「改革」によって、額に汗する勤労国民の「痛み」は増し、所得格差は拡がっています。年金保険料は毎年引き上げられ、医療も保険料の引き上げに加え本人3割負担が導入されました。税制面では、企業や高額所得者には減税(投資減税、株譲渡益、配当益)が実施され、一方で恒久的とされてきた定率減税や配偶者特別控除は廃止され、年金課税も見直されました。さらに07年には低所得者ほど強い影響を受ける消費税の引き上げなど大増税の動きが見えています。また成果主義の導入で賃金格差が拡大するだけでなく、サービス残業の常態化など労働者間競争が激化し、職場の状況はきわめて深刻です。

6.失業率も5%台から統計上は4%台に改善されたかに見えるものの大半は非正規雇用による就業者増で、事態の深刻さには変化がありません。企業は社会保障負担など人件費の軽減を図るため、非正規雇用に切り替えています。総務省の労働力調査によれば、正規雇用者(正社員)97年の3,812万人(76.8)をピークに減少し、05年は3,374万人(67.4)に減少しました。非正規雇用者は97年の1,152万人(23.2)から、05年には1,633万人(32.6)となり、全雇用労働者の1/3まで急増しています。非正規雇用者の増加は低賃金層を増加させることであり、放置すれば所得の格差がこれまで以上に拡がることを示しています。

7.OECD(経済協力開発機構)05年発表によれば、日本の所得格差(ジニ係数)は、調査25カ国中10番目に高く、日本が格差の大きな社会であることを示しています。また貧困率(全世帯の平均収入の半分以下しか収入のない世帯の割合)5番目に高いという結果が出ており、ジニ係数、貧困率とも90年代後半から急激に上昇しています。これは、所得再配分政策の貧弱さと非正規雇用者の急増に大きく起因しており、生活保護世帯も05年度は100万世帯を超えることが確実です。30万世帯といわれる医療保険無加入世帯、将来の社会不安を予兆させる64万人といわれるニート(無就学・無就業)、自殺者が毎年3万人を超える社会状況、企業モラルの失墜、信じがたい事件・犯罪の多発など、「改革なくして成長なし」「民間にできることは民間に」のもとに進められた、市場万能主義と規制緩和に結びつくものです。

8.小泉内閣のこの5年間は、外交的には改憲志向とアジアからの孤立、内政的には勤労国民からの収奪強化、社会保障の改悪による貧富の拡大など、弱肉強食の政策に特徴づけられます。国内外の情勢から私たち労働組合運動の課題も明らかです。その第一は、急速に進む格差社会のなかで、所得格差を是正し、公正・平等な社会を実現していく努力です。そのためには「企業内主義」を克服し、労働組合の社会的役割を強く意識した労働運動が求められます。未組織労働者の組織化、最低賃金など労働条件水準のさまざまな規制強化、春闘における「回答表示」の統一性と透明化なども組織労働者全体の責任です。第二は、平和憲法を改悪させない大衆闘争の強化です。この間、フランスにおける「新雇用制度」撤回のたたかい、米国における移民締め出しに反対するたたかいは、ともに大衆闘争の重要性を再認識させました。日本でも自公政治にノーを突きつけた衆議院千葉補選や自・公・民相乗りの現職候補を破った滋賀県知事選、基地問題を争点とした岩国市、沖縄市の首長選勝利は、反転攻勢のきっかけをつくったといえます。07年に実施される統一地方選挙、参議院選挙に結びつけ、政治も経済も、勤労国民が「主役」となる社会を実現しなければなりません。

 

労働者の生活と労働実態

1.総務省の家計調査結果をみると、勤労者世帯の実収入は0511月から5カ月連続で減少、消費支出も061月から3カ月連続で減少しています。また日銀・金融広報中央委員会の調査では、72年には3.2%しかなかった「貯蓄なし世帯」は、95年に7.9%になり、05年には23.8%へと激増しています。連合試算では厚生年金保険料引き上げ、所得税・住民税の定率減税半減で年収500万円世帯の負担増は約36千円になっており、労働時間調査では年間総実労働時間は2,000時間を超え、不払い残業を内部・外部から指摘された組合が3割以上あることがわかりました。景気回復の裏側で、労働者の生活は厳しさを増してきていることが明らかです。

2.私鉄総連の賃金実態等総合調査では、比較的賃金制度が整った大手組合でさえ、ここ数年の春闘で賃金水準が下がっており、特に中高年層の落ち込みが大きくなっています。賃金水準の低下は労働意欲の低下につながりかねず、単組の実態賃金を正確に把握することで、常に「水準」を意識していかなければなりません。これまで春闘要求設定にあたって、「これ以下の賃金は許さない」というミニマム設定をおこなってきましたが、これだけで果たして十分なのか検討していきます。

3.私たち、交通産業で働く労働者は、常に乗客の「命」を預かっています。そうした責任の重い仕事であるにもかかわらず、賃金は低位にあり、労働時間は長く、肉体的にも精神的にも疲労している現状は、まさに危険と隣り合わせだといえます。このような状態に耐えきれず、最近では特に若年者の離職が大きな問題となっており、企業側も優秀な人材の確保が難しい、という現実もあります。産業を取り巻く情勢は依然厳しいものの、労使で知恵を出し合い、行政も巻き込んだ抜本的な改善をはからなければなりません。

 

 中国地方における乗合バスの輸送状況および広電の状況

1.中国地方における乗合バスの輸送状況

(1)   中国地方5県の乗合バス輸送人員の状況は、引き続き減少傾向に拍車がかかる状況が続いており、路線の休廃止と大幅減便、自治体運行バスの拡大、持株会社への移行、雇用形態の多様化など、利用者へのシワ寄せが強まるとともに、交通労働者の雇用と生活が脅かされています。中国運輸局資料によると、2004年度の輸送人員は19,309万人で、2003年度より728万人(3.8)の利用者減となりました。(2003年度利用者減288万人) 各県ごとの輸送人員減は、広島県381万人、山口県61万人、岡山県105万人、鳥取県35万人、島根県146万人の減となりました。

(2)   中国5県の人口1人当りで見た、2004年度の乗合バス年間利用回数は25.2回で、2003年度より0.8回減っています。広島県は38.6回で1.3回減、山口県は21.8回で0.1回減、岡山県は16.9回で0.5回減、鳥取県は12.9回で0.5回減、島根県は12.1回で1.8回減となり、各県とも利用回数が減少しています。

(3)   2004年度の乗合バス営業収入は5416,800万円と前年より117,400万円(2.2)の減収となりました。広島県は81,100万円、山口県2600万円、鳥取県17,900万円、島根県6,000万円の減収、岡山県は8,200万円の増収となっています。貸切部門は、前年に対して109,700万円の減収で、広島県83,300万円、山口県2,900万円、鳥取県12,400万円、島根県2500万円の減収でしたが、岡山県は9,400万円の増収となっています。増収の要因は特定できませんが、イベント開催などによる集客効果が中心であると考えられます。

(4)   2005年度の国庫補助金は、生活路線維持費が645,955万円(1,799系統)、車両購入費が68,979万円(139系統)で、そのうち、中国5県の生活路線維持費補助金(公営含む)の交付額は8744万円、車両購入費は15,998万円となりました。地方自治体の単独補助については、総務省に対し中国5県で463,890万円を申請しており、広島県125,227万円、山口県146,401万円、岡山県45,428万円、鳥取県84,915万円、島根県61,919万円の申請となっています。

(5)   高速バス(都市間を結び、停留所を限定して運行する急行系統で、概ね50km以上の系統を運行する乗合バス)の運行状況(2005101日現在)は、中国5県で112路線運行され、前年度より1路線増加しています。ここ数年、高速バス路線の増減は小康状態になっており、需給バランスが安定してきていると思われます。一方、観光エージェントが貸切バスを利用して行う「ツアーバス」は、全国的に横行しており、格安の料金設定により高速路線バスの利用者を奪っています。今年714日より2ヵ月限定で、オリオンツアーの募集による下関〜東京間の運行をサンデン交通が行うことになりました、

(6)   地方バスの現状は、不採算路線の休廃止が急速に広がり、80条方式を中心とする地方自治体による独自運行・委託運行に移行するとともに、貸切バス部門の縮小・分社化・撤退などにより、職場の縮小・労働条件の低下など懸念材料が拡大しています。さらに、環境対策や原油高、高齢社会の進展と人口減少など、将来的な課題を含めた検討と取り組みが求められています。2004831日に出された中国地方交通審議会答申は、その具体化に向けた論議が進められており、関係諸法制の見直しの動きも見ながら具体的な施策を提言することが求められています。

 

2.広電の状況

(1)電車部門

  今年度の電車部門における輸送人員の推移は、鉄道部門は17,810千人となり、前年に比し、約23.7万人(1.35%)の増となりました。軌道部門では約18万人(0.46%)の増となった。これは前年度電車部門170万人の減少から、41.7万人の増となりました。積雪の影響で利用者が増えたことと広島県大型観光キャンペーンの効果により他県から人の流入があり、増収効果となりました。

 

鉄道

軌道

2001年度

18,628

39,857

2002年度

18,480

38,220

2003年度

18,413

39,663

2004年度

17,573

38,784

2005年度

17,810

38,964

(単位:千人)

 ()自動車部門

   バス部門においては、都市圏乗合は33.7万人(2.0%)の減少、地域乗合では28.1万人(1.46%)の減少となっており、全体では61.8万人(1.8%)の減少となっています。自動車部門においても、前年度178万人の減少から比べると若干利用者減少傾向に歯止め感が出てきています。しかし、依然と郊外型の大型複合商業施設の出店による都市機能の分散化、近郊団地の開発から年数が経過し、高齢化と子供の独立による通勤・通学という固定客層の需要減少が進んでいます。

 

都市圏乗合

地域乗合

2001年度

18,533

22,822

2002年度

18,013

20,965

2003年度

17,569

20,285

2004年度

16,810

19,249

2005年度

16,473

18,968

                         (単位:千人)