平成14年11月21日
私鉄中国地方労働組合広島電鉄支部
(講師 交通安全研究所 大塚博保)
交通心理学から見た
安全衛生
第1部安全運転のための心理学
安全運転と生理学的心理学的条件
1、事故の8割は、ぼんやり、いい加減運転
―事故を減らすのは簡単な話:しっかりと、ちゃんとやればよいー
(1)交通事故の発生原因
@交通事故(人身事故)発生原因の10位までが、すべてぼんやり・いい加減運転
第1位〜第5位 安全不確認 脇見運転 動静不注視 一時不停止 漫然運転
〈どうしようもない〉ぼんやり・いい加減で58.9%
第6位〜第10位 運転操作 交差点安全進行 優先通行妨害 信号無視 徐行違反
<気の弛んだ>ぼんやり・いい加減で22.3%
第1位から第10位の上位10位のぼんやり・いい加減で81.2%
→その気になってしっかりと前を見て運転すれば交通事故は8割なくなる
A死亡事故発生原因の第1位は最高速度違反で、全死亡事故の24.1%
第2位から第5位は脇見、漫然、運転操作、安全不確認(32.9%)
酒酔い運転は死亡事故第6位(5.1%)
あと、第7,8位が…一時不停止、信号無視(8.9%)
→スピードオーバー運転 飲酒運転 ぼんやり・いい加減運転をしなければ
死亡事故は7割なくなる
B致死率の第1位は踏切不停止、第2位が酒酔い運転、第3位が最高速度違反
(2)スピードは控えめに 一走行速度と事故死亡率一
事故直前速度が高いと死亡事故になる率が高い
事故直前速度が時速10Km増す毎に、死者数は2倍
最高速度違反は死亡事故直結型違反である
(3)シートベルトの効用
シートベルト着用の効用は大きい
運転席は特に効用が大きいが、後部座席でも着用する習慣を
2、自動車運転の身体への負担の程度
自動車の運転は極めて軽い作業歩くより楽 事務作業と同等
3、疲労と運転
(1) 自動車運転による疲労の程度
自動車運転作業は筋肉作業ではなく、精神作業
身体的には軽いが、精神的には厳しい作業
(2) 疲労と事故
運転作業は身体的に軽くとも、精神的負担は大きい
運転専門者は疲労の蓄積とともに事故が発生している
一般の運転者は交通量と共に事故が発生している交通量が多いと事故を起こしている
(交通量と交通事故の相関:r=O.82)
(3) 年齢と疲労による事故
中高年者の事故は夜間に多い疲労の蓄積、機能低下と共に事故を起こしている
(4) 居眠り運転による事故
一般事故との比較による居眠り事故の特徴
@居眠り事故の型
居眠り事故は人対車による事故は少なく、単独事故が多い
車対車の事故は正面衡突と追突で占められている
人対車の事故は背面通行中の歩行者が多く、道路横断中の歩行者とは少ない
A 居眠り事故による損害の程度
居眠り事故は一般事故、高速道路事故に比べ死亡、重傷が多く、物損は少ない
致死率、致死傷率は極めて高い
B 居眠り事故が発生しやすい道路
国道、高速道路など高規格のいわゆる走り易い道路で多い
だが、人混みでも発生している
C 居眠り事故が発生しやすい時刻
23時から7時の夜半から明け方に多い
D 事故前夜の睡眠時間と居眠り事故
居眠り事故の80%が前夜睡眠6時間未満
居眠り運転とならないためには、(一連続睡眠の場合:通常の生活形態の場合)
6時問以上の睡眠、できれば少なくとも7時間以上の睡眠が好ましい(
仮眠は、回数、時間を累積しても、8時間近くの睡眠では足りない
E 同乗者の有無と居眠り事故の発生しやすさ
居眠り運転時、同乗者なしの単独運転が半数
同乗者がいてもそのうち半数が寝ていた
F 居眠り事故を起こした運転者には事故、違反前歴が多い
居眠り運転者のほとんどに交通事故、違反前歴がある
なお、飲酒運転者にも同じく交通事故、違反前歴者が多い
好ましくない運転行動様式を持つ者は基本的生活態度に欠如していると考えられる
日常の生活管理、自己行動管理が大切
(5) 単調な運転(高速道路)と事故
変化のない単調な運転は低覚(低覚醒、精神的低調)状態を誘発させる
高速道路などでは速さ、走行位置に変化を持たせることにより
まどろみ、眠気から脱却できる(周囲の状況を確認しながら)
4、飲酒と運転
飲酒運転は少ないが、もし飲酒運転をすると致死率は極めて高い(第1表)
(1) 飲酒実験の一事例
極く少量のアルコールで理性が崩壊する(前頭葉の麻痺)
→"飲むなら乗るな"の徹底
飲酒により単純(反射的)反応速度は変わらない
行動に誤りが増える
ぼんやり、弛緩反応が増える
だが、飲酒運転者は、自分では正常な運転ができると思っている
(2) 飲酒後の呼気(血)中アルコール濃度とその消失
体重の少ない者はアルコールがなかなか消失しない
飲酒後2時間までは急速に消失するが、後は徐々に消失する
体重60Kgの人がビール2本飲むと翌日の午前中はアルコールと共に仕事をする
5、年齢と運転機能の変化
(1) 高齢者の事故
高齢者の事故惹起は少ないが死者率は若者並みにやや高く、致死率は極めて高い
(2) 運転機能の年齢による変化
@反射的反応の速さは年齢と共に遅くなるが、あまり年齢差はない
A年齢が増すにつれて、行動に誤りが増える高齢者には顕著
Bぼんやり(弛緩)反応が増える高齢者には顕著
C行動、反応にむらが出る
D前方への注意の配分は年と共に減退する
特に視線の中心部よりも周辺部への注意力の減退が著しい
E若者・10代後半は、反応遅く、誤り多く、ぼんやり多く、発達途上
第2部事故、違反を繰返す・その心理
1、事故・違反発生のメカニズム
@式(不安全行動)十(好ましくない環境)=事故
A式(違反行動)十(取り締まり)=違反検挙
運転行動→人間行動→精神的心理的行動素因(全人格=性格、能力)
事故・違反・不安全行動の真因は自分目身にある
不安全行動の原因は自分の中に潜んでいる
だが、人は誰でも「無くて七癖」他者の忠告は大切に
2、事故、違反の偏り一同一運転同一事故、同一違反ではない
事故・違反は運転者すべてが均等に負担しているのではない
比較的少数の運転者によって多くの事故、違反が負担されている
事故、違反発生のメカニズムは同じ事故と違反は仲間同志
3、不安全行動と違反行動は同じもの
@危険を伴う作業 安全規範・安全手順=安全マニァル
外れると「不安全行動」
A自動車運転(危険を伴う)一安全規範・安全手順=道路交通法
外れると「交通違反」
B無事故運転(安全行動)とは違反(不安全行動)とならない運転(行動)をすること
C交通取締件数と事故発生件数とは相関が高い(逆相関がある)
r=一0.822
4、事故・違反運転者の心理的精神的特性
@運転は全人格的行動
A事故・違反は人格の不均衡から発生する
B安全・正常な運転には均整のとれた人格高次な精神機能が要求される
☆状況判断力、動作機能、精神安定性、安全意識態度
C事故・違反者の心理特性〜自分を知ることが大切
a.状況判断能力(認知・判断の能力)
交通状況の認知、行動決定判断力が適切でない者には事故が多い
b.精伸安定性、心の調整
自分自身の行動統禦に関するもの:神経質傾向、抑鬱性(回帰性)
他の人との対応行勤に関するもの:攻撃性、非協調性
両方向をもったもの:感情高揚性、自己顕示性
c.安全態度(第21表、第22表、第23表)
安全であろうとする気持ち・意識・態度は運転の質を決定する
安全態度に具合のわるさがあると、ぼんやり、いい加減運転を誘発させ
事故を起こすことになる
第3部自動車と人間心理
1、欲求が人問行動を誘発する
人間存在は基本的欲求・本能的欲求が基礎
人間は本能として自由度の高い行動への欲求を持つ
2、自動車の行動性
自動車は自由度の高い行動への本能的欲求を満足させる最適な道具
行動の抑圧、制限からの時速4キロメートル地上歩行からの解放
3、安全運転の基本となる行動様式
本能的行動欲求に基づく行動にもそれなりの作法が必要
食事にも、睡眠、排泄にも作法マナーがある
人生最初の対人安全行動はさみの渡し方人に対しての危険な物の取扱い
人に怖さを感じさせない運転(二人に刃先を向けない運転)
4、意識改革が必要
行動決定者は自分 自分がやらなければ、他にやる人はいない
意識、態度、行動の変容が必要
安全は自分から創り出すもの自分で自分の行動を改善
規律正しい生活のなかに安全がある日常行動を規律正しく
5、対人適応への努力・安全マインドの醸成
@人の立場を考える A人に迷惑を掛けない B確固とした安全意識
C(できれば)心と時間にゆとり
